IT化を進める上で、導入目的としてよくあげられる事項の一つに「
ビジネススピードの向上」がある。
現在の企業を取り巻く環境は、昔と比べ相当早いスピードで動いている。その理由としては、IT技術の進化により「情報伝達スピードが格段にあがったこと」があげられる。携帯電話・インターネット・社内LANなど、必要な情報をいつでも、すぐに手に入れることができる環境が整ったことがその要因である。
そういった企業を取り巻く急速な環境の変化に対して、企業側の取組みとして、「
リアルタイム経営」や「
スピード経営」の必要性が、昨今、言われつづけている。
では、「ビジネススピードの向上」とは、具体的にはどういうことだろうか。私は、次の2つだと考える。
ひとつは、「
経営者の意思決定のスピードを上げる」ことである。
つまり、必要な情報を、必要な時に、いつでも手に入れることの出来る仕組みを構築することで、意思決定をすぐに行なうことができるようにすることである。
ERP導入などが実例としてあげられる。
昔、転職活動をしていた際に、ある金券ショップのチェーンを展開する会社に面接に行ったことがある。応募内容は、経営企画担当だったと思う。その時に、社長は、転職希望者をパソコンの前に、連れて行ってこう言った。
「当社は、店舗の状況を把握するため、リアルタイムに各店舗の数字を管理していて、日次決算を行なうこともできる。しかしながら、まだまだ、不満がある。最終的には時間単位で決算が行なえるようにしたいんだ。」
当時の私には、この社長の言葉の本当の意味がまったくわからず、むしろ、「そんなところに力をいれてどうすんねん、もっと違うところに、力入れろよ」となかばあきれてしまった記憶があった。
しかしながら、この社長の先見性は、たいへんすばらしかったというが本当のところである。今思えば、あの言葉は、経営者として、正しい意思決定を行なうために、自分の会社の数字をリアルタイムで把握したいという社長の想いだったのではないだろうか。
もうひとつは、「
顧客とのレスポンス(やりとり)のスピードをあげること」である。
CRMや
SFA、はたまた、
サプライチェーン・マネジメントなどいろいろなITキーワードが存在するが、どれもこれも、究極的な目的は同じである。
それは、「顧
客のアクションに対して、迅速に対応する」ということである。
CRMでいえば、顧客からの問い合わせがあった場合に、コールセンターでは、どういう顧客が電話をしてきたのかをすぐに把握し、顧客のレベルに応じたきめこまやかな対応が、その場で出来ることである。
また、SFAにしても同様である。いままでは、商談がまとまりそうになった際に、営業マンはこう言っていたと思う。「それでは、これから社にもどって、正確な見積もり金額を算出し、明日、見積書をお持ちします。」
しかし、これではビジネスチャンスを逃してしまう恐れがある。なぜなら、商談時点では、その気になっている顧客も、いったん冷静になると、意思決定が変わってくる可能性があるからだ。翌日、見積書を持って訪問してみると、担当者が「よく考えてみると、その条件では契約するメリットがあまりないので、再度検討させてください」などと言い出しかねない。
もし、SFAを導入していれば、結果が変わってくるかもしれない。
顧客の見積もり要求に対して、その場でノートパソコンを広げながら、見積もりを算出し提示することができる。また、運がよければ、その場で注文をとり、受注処理を行なうことが出来るかもしれない。見積書は、後日でも問題ない、必要なのは、契約手続きではなく注文だからである。
要するに、顧客のニーズやアクションに対して、どれだけすばやく対応できるかが、今後、ビジネスチャンスを広げるカギになってくる。以上の2点のポイントは、今後、企業経営を行なう上で、必要不可欠な要因だと考えている。特に顧客との接点を意識したビジネススピードの向上は、市場競争で生き残るための重要成功要因となりうるものである。これらを意識して、ビジネススピードを上げるためにIT化を進めるならば、経営者は、より大きなITのメリットを享受できるのではないだろうか。
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